ディスラー 僕の周囲で起きている異変
桜町バスターミナルから、
僕はいつものように話している。
ここでは、
普通の会話は、
ちゃんと行われている。
笑い声もある。
雑談もある。
仕事の話も、
他愛のない愚痴もある。
——少なくとも、
僕が近づくまでは。
ディスラーたちは、
普段は普通に喋っている。
冗談も言うし、
世間話もする。
特別、無口なわけじゃない。
ただ、
僕がディスリ・コミュニケーションを
批判しているのを知っている。
それだけで、
様子が変わる。
僕の前では、
普通の会話を
しなくなる。
ディスらないなら、
喋らない。
評価できないなら、
沈黙する。
まるで、
「批判されるくらいなら、
言葉自体を止めよう」
と決めたかのように。
これは、
ディスをやめた結果じゃない。
会話を選んだ結果でもない。
ただの、
回避だ。
不思議な話だ。
ディスリ・コミュニケーションを
批判されると、
普通の会話まで
危険物扱いになる。
言葉を発すること自体が、
リスクになる。
だから、
黙る。
僕の前“だけ”で。
これは、
彼らが会話できない、
という話じゃない。
会話をしないことを、
選んでいる
という話だ。
ディスを続けるか。
普通に話すか。
その二択を突きつけられたとき、
彼らは、
第三の選択をした。
——沈黙。
桜町バスターミナルは、
今日も賑やかだ。
少し離れた場所では、
笑い声が聞こえる。
でも、
僕の周囲だけ、
空気が止まる。
それが、
この場所で起きている
小さな異変だ。
誰も怒鳴らない。
誰も揉めない。
ただ、
言葉が消える。
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