11限よりの使者
1話 水樹ルナ 2025年。日本はゴールデンウィークが始まったばかり。ぼくの名前は月見想(つきみそう)、17歳、11月生まれだから高校2年生なんだ。身長は169センチ。成績はまあまあ。お父さんは高校の物理の先生。お母さんは若いとき文学少女だったんだって。おかげさまで理系も文系も好きなんだ。SFが大好きで、将来SF作家になれたらって思ってる。 起きたばかりで、なんだか頭がぼ〜っとしてる。 「想〜、ご飯よ〜」 1階からお母さんの声が。 「う〜ん、ちょっと待って〜」 まだお腹減ってないし、テレビでもつけてみるか。 「次のゲストは水樹ルナさんです。どうぞ〜」 ルナがスタジオに入ってくる。人気アナウンサーとの対談が始まる。 「ルナさん初めまして」 「あ、初めまして」 「お掛けください」 「はい、ありがとうございます」 ショートカット。赤いニットの上着と短い黒のスカート。黒のストッキングが膝の上まで。それに黒い靴。黒が多いのに少しも暗い雰囲気がない。それは赤い上着のせいでもあるが、彼女の大きくて澄んだ屈託のない目から、彼女の内面の明るさが感じられるからだろう。 「デビュー作の大ヒットに続いて、今回のシングルも大ヒットという事で、どうですか? お気持ち」 「そうですねえ。またヤッタゼって言う感じ。こりゃドンドン行けそうじゃんて、実感が湧いてきました」 「ずいぶん軽いノリですね。でも、曲は人間の内面の機微と深さを描いた、評価の高いものですよね」 「そうですね。感じたこと思ったことを、これってなんだろうって考えることは多いですね」 ふ〜ん、軽い割にはそんなこと考えてるんだ。こりゃ、要チェックだな。 「想〜、早くしなさ〜い」 「う〜ん、今テレビ見てんだよ〜、後にするよ〜」 「は〜い」 うちの母はうるさくなくてラッキー。生まれてから今まで「勉強しなさい」って1度も言われたことがないんだ。お父さんからもね。 「ルナさんはロンドンでお生まれになって、6歳でマドリード、12歳のときパリに移られて、15歳からニューヨークでお暮らしなのですが、どうですか海外の生活は」 「はい、大変なこともあるけど変化があって、いろんなことが体験できて、あたしがこんななのもきっとそのせいじゃないかなって。そう言う意味ではかなりラッキーだと思ってます」 この何の気なしに付けたテレビが、誰も体験したことのない僕の未...