11限よりの使者 


1話 水樹ルナ


 2025年。日本はゴールデンウィークが始まったばかり。ぼくの名前は月見想(つきみそう)、17歳、11月生まれだから高校2年生なんだ。身長は169センチ。成績はまあまあ。お父さんは高校の物理の先生。お母さんは若いとき文学少女だったんだって。おかげさまで理系も文系も好きなんだ。SFが大好きで、将来SF作家になれたらって思ってる。


 起きたばかりで、なんだか頭がぼ〜っとしてる。

「想〜、ご飯よ〜」

1階からお母さんの声が。

「う〜ん、ちょっと待って〜」

まだお腹減ってないし、テレビでもつけてみるか。

「次のゲストは水樹ルナさんです。どうぞ〜」

ルナがスタジオに入ってくる。人気アナウンサーとの対談が始まる。

「ルナさん初めまして」

「あ、初めまして」

「お掛けください」

「はい、ありがとうございます」

ショートカット。赤いニットの上着と短い黒のスカート。黒のストッキングが膝の上まで。それに黒い靴。黒が多いのに少しも暗い雰囲気がない。それは赤い上着のせいでもあるが、彼女の大きくて澄んだ屈託のない目から、彼女の内面の明るさが感じられるからだろう。

「デビュー作の大ヒットに続いて、今回のシングルも大ヒットという事で、どうですか? お気持ち」

「そうですねえ。またヤッタゼって言う感じ。こりゃドンドン行けそうじゃんて、実感が湧いてきました」

「ずいぶん軽いノリですね。でも、曲は人間の内面の機微と深さを描いた、評価の高いものですよね」

「そうですね。感じたこと思ったことを、これってなんだろうって考えることは多いですね」

ふ〜ん、軽い割にはそんなこと考えてるんだ。こりゃ、要チェックだな。

「想〜、早くしなさ〜い」

「う〜ん、今テレビ見てんだよ〜、後にするよ〜」

「は〜い」

うちの母はうるさくなくてラッキー。生まれてから今まで「勉強しなさい」って1度も言われたことがないんだ。お父さんからもね。

「ルナさんはロンドンでお生まれになって、6歳でマドリード、12歳のときパリに移られて、15歳からニューヨークでお暮らしなのですが、どうですか海外の生活は」

「はい、大変なこともあるけど変化があって、いろんなことが体験できて、あたしがこんななのもきっとそのせいじゃないかなって。そう言う意味ではかなりラッキーだと思ってます」

この何の気なしに付けたテレビが、誰も体験したことのない僕の未来の幕開けになるとは思ってもいなかった。



2話 ドッペルゲンガー 月見照


「おい」

なんだなんだ?

「おい」

わわ。この部屋には誰もいないのに声が。

「おい、こっちだよ」

「誰だ?」

「こっちに来い」

声のする方を見る。大きな本棚の方だ。そこの中央の立ったときちょうど目線くらい、30センチ四方くらいの一角からこっちを見ているヤツがいる。赤い髪の毛。いや待て。こいつの顔って。

「え〜〜!!」

「驚いたか。そりゃそうだろ。俺はお前のドッペルゲンガーなんだよ」

こいつの顔を見ればそれを認めないわけにはいかない。僕は動揺しているが、なるべくそれを悟られないように話を続けた。

「なんでそんなとこにいるの?」

「実はここ、つまり俺がいるところは亜空間。11次元なんだ。それがお前に見えるのは目の前にある、30センチ四方の次元転移フィルターのおかげなんだ」

「本当か? 隣の部屋にいるんじゃないだろうな? 壁に穴あけたんなら弁償しろよ」

「アホか。じゃあ隣の部屋に行ってみろ」

「ちょっと待ってて」

隣の部屋の扉をノックする。

「誰〜?」

お父さんの声だ。

「想〜」

「ああ、入っていいぞ」

「うん」

扉を開けるとお父さんがソファで本を読んでいるだけで、何も変わったところはない。

「どうしたんだ? キョトンとして」

「うん、いや、なんでもないよ。じゃあね」

「おいおい。大丈夫か? おかしなやつだなぁ」

僕は扉を閉めて、自分の部屋へ戻った。

「どうだった?」

「うん、普通だった」

「だろ、これで認めるだろ」

「そうだね」

「よしよし。今、お前がいない間にテレビ見てたんだけど、水樹ルナか。いいなあ。俺のタイプ」

「実は俺もタイプなんだ」

「やっぱりドッペルゲンガーだから女子の好みも同じってわけだ」

2人ともテレビに目をやる。

アナウンサー

「またこの番組にも遊びに来てくださいね」

ルナ

「来る、かな?」

「ハハ、ありがとうございました〜、水樹ルナさんでした〜」

「どうも、ありがとう〜」

CMが流れる。

「テレビ消せ」

「あ〜あ、せっかくいいとこだったのに君が来たせいで見逃しちゃったよ」

「うるせえ。俺だって50年前のテレビの番組表までは把握できないんだよ」

「まあね。でもなんで君はそんなとこにいるの?」

「これには色々と込み入った事情があってな」

「ふ〜ん、教えてくれよ」

「ああ、なるべく簡潔に話すからよく聞け」

「うん」

「本当は俺の実体は今から50年後つまり2075年の世界にいるんだ。2070年に解き明かされた、新量子力学のシュレゲンガー理論によると、時空を超えて同じものが2つ存在することができる。つまり俺とお前だ」

「ちょっと待ってよ。同じって言ったって、確かに顔はそっくりだけど、髪の色も性格も全然違うじゃないか」

「まあな。そこんとこはまだ、新量子力学では解明されてないんだ。で、続量子力学を2075年の現在、俺のオヤジが研究中なんだ」

「君のお父さんって物理学者?」

「ああ、天才物理学者として世界でも有名なんだ」

「へえ、すごいね」

「確かにすごいけど、困った親父だぜ。1ヶ月前に『11次元ダイブヘルメット』名付けて『イレブン・ダイバー』を発明したんだ」

「変な名前だね」

「だろ〜、俺ももっといいネーミングあるだろって言ったんだけどな。それは置いといて、俺をその実験に使いたいって言うんだよ。実の子に何が起きるかわからないのに、とんだマッドサイエンティストだぜ」

「ハハハ」

「笑い事じゃないよ。俺が死んじゃったら、ドッペルゲンガーのお前も消えてなくなるんだぞ」

「え、ほんと?」

「ほんとさ」

「わ〜、お父さんに君を変な実験に使わないでって言っといてよ。頼むから」

「ああ、でも俺ってこう言う冒険やりたいタイプ」

「やめてよ〜」

「やるかやらないかは俺が決める。お前の指図は受けない」

「確かに性格違うなぁ」

「で、イレブンダイバーを頭にかぶると11次元にダイブできて、過去にアクセスできるんだ。だからほんとの俺はオヤジの実験室にいるんだけど、2025年に来てお前と話してるってわけだ。わかったか」

「うん、わかったけど。そのフィルター触っていい?」

「うわ〜、やめとけ〜、何が起きるかわかんねえし」

「そうなんだ」

「そこは親父にもうちょっと研究してもらうとしてだな。ここへきたのは単に俺のドッペルゲンガーと話がしたかったからじゃないんだ。もっと重大な問題があるんだ」



3話 エレクトリシティ


 月見照が話を続けた。

「俺のオヤジは天才物理学者だろ。実はタイムマシンも発明したんだ」

「え、だったら君、タイムマシンで現在に来ればよかったのに。でも今までの歴史上でタイムトラベラーが現れたって話は聞いたことがないよ」

「そうか、だろうな。タイムマシンには莫大なエネルギーが必要だ。つまりワームホールを作るためにな。それには核融合しかない。核分裂だと放射性廃棄物がとてつもなくなく増えて、えらいことになる。だが2025年に核融合はまだ実用化されてないんだ。2035年に実用化される。つまり核融合実用化以前の世界にタイムトラベルしてしまうと、エネルギー切れで2度と元の世界に戻れなくなるんだ」

「なるほど。それで2035年までの人類は未来永劫タイムマシンは発明されないと信じてるわけだね」

「ああ、で、これからが本題だ。俺は2075年にマッドサイエンティストのオヤジの命令で、人類最初のタイムマシンに乗って10年後に行かされたんだ」

「わ〜、失敗して君が死んじゃってたら、僕も死んでたんだろ」

「そういうことだ」

「ありゃ〜」

「だからお前いつ死ぬか分からないってことだけは覚えとけ」

「わわわわわ、、、」

「そうあわてるな。俺だって死にたかないよ。オヤジの頭脳を信じてるから多少の冒険ができるんだ」

「あわ、あわ、あわ、あわ、、、」

「大丈夫か? 落ち着け。もっと大変な問題があるんだ。いいか、俺が今生きてる2075年の10年後、つまり2085年には人類は絶滅してたんだよ」

「え、2075年によく戻ってこれたね」

「そこはオヤジのことだ、ぬかりはないさ。もしもの時のために20年分のエネルギーがタイムマシンには入ってた。20年分くらいのエネルギーはオヤジの作ったタイムマシンには搭載可能だ」

「ふ〜ん、まあ君のお父さんを信じるしかないか」

「そうだろ、で、オヤジがある理論を導き出したんだ」

「どんな?」

「時空パラドックス理論って言うんだ。これはアインシュタインの相対性理論にも匹敵するくらい難しい理論らしくて、オヤジの説明を聞いても全くチンプンカンプンなんだよ。だけどそれによるとお前が生きてる2025年の10年後に地球温暖化で人類は滅亡するんだ。そして俺が生きてる2075年の10年後に俺たちの世界も消えてなくなる」

「え、え、え、、」

「あわてるな、2075年に俺が生きてるってことは人類は滅亡してないってことだ」

「あ、そうだね。だったら10年後の人類の滅亡はありえないんじゃないの?」

「そこが時空パラドックス理論の難しいところで実際そうなるらしい。でだ、オヤジが俺のドッペルゲンガー、つまりお前が2025年に存在することを突き止めて、お前に地球温暖化をストップさせようということになった」

「無、無茶いうなって。そんなことできるわけが」

「だが、今んとこ他に打つ手がないんだ」

「だったら、もっとお偉いさんのとこに行って話してくれよ」

「それはできない」

「なんで?」

「11次元にダイブしてもドッペルゲンガーのお前にしかアクセスできない」

「どうしてだよ」

「オヤジの説によると、エレクトリシティーかなにか、と言ってるけどオヤジにもよくわかんないみたいだ」

「なんだそれ〜!」

「とにかく何とかするしかない。またくるから」

「え〜〜」

「じゃあな」

「あ、うん」

僕はえらい事になったと思った。人類の存亡が僕にかかっている。いやいや、そんなことは知ったこっちゃない。だけどなんとかしないと僕は10年後に死んじゃうってことだ。どうしよう、、、



4話 ドッペルゲンガー 見月ウサギ

 1週間後、また月見照が現れた。

「おい」

「あっ」

「どうだ、何かいい考えは浮かんだか?」 

「べつに。君のお父さんにいい考えがあるんじゃ?」

「それは無理だ」

「どうして?」

「オヤジは今、続量子力学の研究に夢中で、それどころじゃないんだよ」

「え? だって10年後に君のお父さんも消滅するかもしれないんだろ」

「それが、オヤジときたら全く聞く耳持たない」

「うわ〜、やっぱりマッド・サイエンティストだ」

「だよな、それで俺たち2人で対策を考えるしかない」

「え〜、それって無理っぽ」

「へへ、ちょっといい考えがある」

「どんな?」

「まずお前が、環境問題についてのブログを作れ。そして、あの水樹ルナに協力してもらう」

「どうやって?」

「実は、うちのクラスに最近転校してきた子がいるんだが、そいつがルナにクリトリ、、じゃなかったクリソツなんだよ」

「スケベか! 昭和か! 今どきクリソツなんて言わないよ」

「何だその昭和って」

「いいから、先続けて」

「うん、その子の名前が実は何と、見月ウサギって言うんだよ」

「へ〜〜」

「な、不思議だろ。ドッペルゲンガーの俺とお前が月見、そして見月ウサギと水樹ルナがどちらもミズキ」

「なるほど、2人はドッペルゲンガーに間違いないよ」

「だろ、だろ、だからウサギがイレブンダイバーを使えばルナにアクセスできる。しかも月見の俺たち2人と見月も月つまりルナを見てるって事だ」

「不思議だね。確かに何かあるね。だったら僕が作ったブログをルナに全世界に紹介してもらえるかも。しかも、ルナが英語、フランス語、スペイン語に翻訳してくれたら」

「ルナの人気とネームバリューなら相当な影響力が期待できる」

「お父さん高校の物理の先生で、環境について詳しいんだ。協力してもらうよ」

「それで行こう。俺はウサギを説得してルナにアクセスしてもらう」

「なんか、うまく行きそうだね」

「よし、1週間後にまたダイブするから」

「うん、じゃあね」

「じゃあな」


月見照 放課後

「ちょっと、見月さん」

「はい」

「俺、月見」

「名前は知ってます。あたしの名前と似てるから、、」

「へへ、よろしく」

「よろしくお願いします」

「実はさあ、、、」

俺は、これまでのいきさつと、これからの計画を話した。

「そんなこと急に言われても、信じられません」

「だろうね、うちの研究室に来て欲しいんだ。10年後の人類が消滅した世界の映像を見せるから」

「はあ、でも両親が厳しくて、男子の家には遊びに行くなって言われてて」

「じゃあ、両親には女子の友達の家に遊びにいくって言えばいい」

「そうもいかないいですよ。すみません、じゃあ」

「ちょっと〜」


この前のダイブから1週間後

「おい」

「あっ」

「困ったことになった」

「どうしたの?」

「うん、見月ウサギに協力してもらうには時間がかかりそうだ」

「あら〜」

「でも、なんとかウサギをルナに会わせるしかないな」

「そうだね」

「じゃあな」

「うん、じゃあね」

人類絶滅まであと10年、前途多難だ〜〜〜




5話 ルナとウサギ


放課後、照と見月ウサギ

「見月さん」

「あ、月見くん」

「ちょっと見せたいものがあるんだけど、教室じゃマズいから体育館の裏に行こう」

「え? でも」

「頼む、これには人類の存亡がかかってるんだ」

、、、、

「わかったわ」


体育館の裏

照がポケットから取り出したスマホの画面が上向きになっている。その上にホログラムが。

「これはオヤジが開発した人間探知アプリ、名付けて『人間見た』なんだ」

「なんかイヤなネーミングね」

「オヤジはネーミングのセンスないから」

「そうかもね」

「今、体育館で練習しているバスケ部の連中を探知するから」

ホログラムの上に黄色いいくつかの光が。

「へ〜、すごいわね」

「これを地球全体に拡大すると、、、」

ホログラムが丸くなり地球上の人間がいるところが黄色く光っている。

「わぁ〜」

「で、次に見せるのは、俺が10年後にタイムスリップしたときの『人間見た』のデータだ」

丸い地球の1か所だけ小さく光っている。

「これって月見くん?」

「そうだ」

「なるほど確かに他に人類はいないわね」

「な、わかってくれるだろ」

「うん、でも月見くんの真剣な顔を見ればデータなしでも、あなたを信じられるかも」

「そうか、、、」

月見照の目に涙が、、、ウサギがそれを見て

「協力する、って言うか、あたし自身の問題でもあるのよね。生き延びるために」

「そうだな、じゃあオヤジの研究室に来てくれ。いつがいい?」

「今度の日曜の9時はどう?」

「わかった」

「じゃあ、またね」

「またな」


日曜日

照の父親の研究室、照とウサギがいる。

「来てくれてうれしいよ」

「うん、ドキドキするわ」

「え?」

照はちょっとかんちがいしている。

「だって、11次元にダイブするなんて」

「なんだ、そうか」

「え、どうしたの?」

「い、いや、なんでもない。じゃあ早速説明するよ。まず君がダイブしてルナのところに行く。その後次元転移フィルターを転送する。これは君とルナがお互いに面と向かって話せる場所に最適化されて設置されるから」

「わかったわ」

「じゃあイレブンダイバーをかぶってくれ」

「はい、あ、ちょっと待って。あたしがダイブしてるあいだ変なことしないでくださいね」

照は真っ赤になった。

「当たり前だろ」

「へへ、ちょっとからかっただけ、あなたを信用してます」

「おいおい、、、じゃ、スイッチ入れる」

「はい」


水樹ルナの浴室

ルナがお風呂に入っている。突然お風呂の壁に30センチ四方の次元転移フィルターが現れて、ウサギがルナに話しかける。

「こんばんわ〜」

「わわわわ〜!」

「大丈夫ですよ、落ち着いて」

「わわわ、わわわ!」

ブクブクブク

「ルナさ〜ん!」

「アップ、アップ」

「ニューヨークで入浴」

、、、

「オヤジか! つまんない」

一気にルナの興奮がさめた。

「よかったわ、どうなるかと思った」

「あ、あなたあたしとそっくりじゃない。どういうことなの?」

「実は、、、、」

ウサギがこれまでのことと、これからの計画を話した。

「なるほどね、でも、そんなブログなんかで地球温暖化がストップするわけないでしょ。あなたたち社会に出たことのない高校生だから、何も分かってないのね」

「え?」

「その月見想くんと照くんに言っといて、世の中そんなに甘くないって」

「そんな〜」

「あなたたち子供相手じゃ、話にならないわ」

「わかりました。あなた抜きでやりますから、ご心配なく。じゃあ、さようなら」

「あ、まって、、」

ウサギと次元転移フィルターが消える。

「言い過ぎちゃったかしら、いい子なのに」


研究室

ウサギがイレブン・ダイバーをはずす。

「ふう〜」

「どうだった?」

「、、、失敗しました」

「え〜」

「世の中そんなに甘くないって言われました」

「そうか、そうなんだ、ルナは世界で活躍してる分、俺たちよりも世間を知ってるってことか」

「そうみたい」

「わかった、想にまた会って対策を話し合うよ。でも、ルナははずせない。俺たちの名前を考えてみろよ。それに君とルナがドッペルゲンガーだってことも」

「そうね」

「じゃあ、また学校でね」

「うん」



6話 茶川賞

「おい」

あ、照だ

「やあ」

「ウサギがルナに会ったぞ」

「え、で、どうだったの?」

「とりあえず失敗した。俺たちの計画が甘いって指摘されたらしい」

「そうか〜、厳しいね。今んとこルナの協力があおげないならブログは無理っぽいし、僕SF作家志望だから、なんとかSFを書いて茶川(ちゃがわ)賞に応募してみる」

「なんだ、その茶川賞って?」

「その賞もらうと、本がメチャメチャ売れる」

「そうか、わかったがそんな雲をつかむような計画じゃなあ」

「一応タイトルとプロットは考えてるよ。『可住衛星ルナ』って言うんだ」

「なるほど、タイトルにルナを入れて、ルナにアピールしたいんだろ」

「へへ〜」

「いっそルナに今後のプランについてアドバイスもらったらどうかな?」

「それもそうだ。ウサギに頼んでみるよ」

「だね」

「うん、じゃあまたな」

「またね」


放課後、照とウサギ

「実はさあ、ルナに今後のプランについてアドバイスをもらって来て欲しいんだ。ルナの方が俺たちよりはるかに上手だと考えた方がいい」

「そうね、それが一番いいと思う。今度の日曜日の9時でいい?」

「はい」

「じゃあ、そんとき」

「じゃあね」


日曜日9時 研究室に照とウサギがいる

「お父さんはどうなさってるの?」

「オヤジは寝てる。昼夜逆転症だから、いつも夕方5時ごろまで寝てるよ」

「じゃあ、2人っきり?」

ドキッ、、、照がまたかんちがいしている。

「あ、ああ」

「どうしたの? 早速ダイブしようかしら」

「あ、な、なんでもない。そうしてくれ」


ルナの部屋、壁に次元転移フィルターが現れる。

「ルナさん」

「わあ〜!」

「すいません突然現れて」

「ビックリした〜、でもいいのよ。このあいだはゴメン、ちょっと言いすぎたんで反省してるの。だって本気で地球温暖化をストップさせるために行動してる人達って、まだまだ少数派でしょ。そんなあなたに邪険にしちゃって」

「あ、気にしてたんですか?」

「その敬語はやめてくれる。あなたいくつ?」

「17歳、高校生です」

「じゃあ、あたしと一緒じゃない。タメ口でお願い」

「はい、わかりました、、、じゃなくて、わかったわ。実は今日現れたのは今後のプランについて何かいいアドバイスはないか聞きに来たの」

「想くんのブログ見たけど新しいSFアップし始めてるみたいね。想くんが書くSF面白かったら、あたしが翻訳してもいいわ。でも、茶川賞取ってもらわないとね」

「う〜ん、めちゃめちゃハードル高いね」

「あたしも協力したいけど、こればかりはクリエイターとしてゆずれないわ」

「きびし〜」

「またきてね。あなた達もっと実力をつけて。考えてることは大きいけど実現するには途中のプロセスを飛ばせないのよ。でも、あせらないで、プロセスを楽しんでね」

「うん、アドバイスありがとう。また来る」

「またね」



7話 環境予測ソフト


「おい」

「あ、照だ」

「やあ」

「ちょっと頼みたいことがあるんだ」

「何?」

「以前オヤジが環境予測ソフトのプログラミングの基礎理論を確立したんだが、一応プログラマーが集まってソフトの開発はやったんだ。でもこっちの時代は環境はクリーンだし、戦争もない平和な世界なんだよ。それで一度使って今後も問題は起きないという結果が出て放置されてるんだが、それをそっちの時代の環境予測に使おうと思って」

「それは名案だね。それでなんていう名前のソフトなの?」

「エコダス」

「君のお父さんのネーミングだよね」

「まあね」

「やっぱり」

「名前はともかく量子コンピュータのなかのAIが少ないデータのインプットでもその背後にある事象を推定して、その結果から計算された未来予測は99%の正確さと言われているんだ」

「へ〜、すごいね」

「で、お前のスマホで検索してザックリとしたデータを送って欲しい。俺とお前がお互いの顔を見ながら話してるって事はこの次元転移フィルターは光と音を通す。つまり波動を通すってことだ。つまり電磁波も通す。お前の時代のBluetoothが使えるスマホを研究室のスタッフに頼んで作ってもらったんだ。そういうものはこっちの時代の3Dプリンターなら簡単にできるんだ。とにかくデータを集めといてくれ」

「うん、わかった」

「じゃあな」

「またね」


1週間後

「おい」

「やあ」

「どうだデータは集まったか?」

「うん、送ってみるよ。いい?」

「ああ」

「どう?」

「OK、じゃあまたな」

「うん、また」


1週間後

「おい」

「やあ」

「どえらいことがわかった」

「どうしたの?」

「2030年の世界の予測が出た。まず地球温暖化によって夏の気温は50度に達する。南極の氷が溶けて世界の半分が水没する。それから温暖化の影響で不作になり世界の人口の半分が餓死する。そしてインフラの半分が水没し、暑くて外で働けなくなるから、運輸、建設労働者などが激減して世界経済は崩壊だ」

「どひゃ〜」

「なんだそのリアクション」

「ハハ、でもとにかくなんとかなるんじゃ。わかんないけど」

「ずいぶん楽観的だな。でもそう思うしかないってところだ」

「ウサギには言ったの?」

「うん、驚いてた。ルナにも伝えてもらった。ルナは結構余裕だったそうだ」

「・・・ふ〜ん、そうなんだ」

「SFは書いてるのか?」

「うん、実はもう書き上げたんだ」

「え、マジか。じゃあ茶川賞には応募したんだな」

「うん、でもルナのコメントが聞きたい」

「そうか、じゃあウサギに聞いてもらう。じゃあまたな」

「うん、またね」


ルナとウサギ

「そうねえ、想くんのSF読んだわ。悪くないと思う。でもいまいちなのよね。あたしはクリエイターとしてアーティストとして納得のいかない仕事はしないわ」

「そんなこと言ってる場合なの? 2030年にどうなるか知ってるでしょ。想くんのSFは人類に警告を発して、その解決方法を提案してるわ」

「あたしは環境予測プログラムを信用してないの。アーテストとしての感覚よ。想くんはどうなの。彼が本当のアーティストだとしたらどう思ってるのかしら」

「想くんはずいぶん楽観的なんだって」

「なるほどね」

「・・・・」

「想くんに言っといて。もっといいSFを書いてって」

「わかったわ、じゃあね」

「うん、じゃあね」



8話 ソーダのCM


「おい」

「やあ」

照がルナのコメントを話した。

「どうだ?」

「相変わらずてきびしいね」

「そうだな」

「それはそうと大事件だよ」

「どうした?」

「ルナがペットボトル入りのソーダのCMに出てるんだ」

「マジか」

「うん、それがソーダの名前が『想だ』なんだよ。これは明らかに僕への挑戦状だよ。ルナは今んとこ環境問題で協力する気はない。どう思う?」

「ハハ、やるねえ」

「いいさ、とにかく茶川賞には応募する」

「そうか、じゃまたな」

「うん、また」


後日

「おい」

「やあ」

「茶川賞の発表あったんだろ。どうだった?」

「落ちた。でも見どころありって事で出版だけはできるみたいだよ」

「そうか残念だな。でもまあ出版できるだけでも良しとするか」

「だね」

「売れるといいな。じゃ、またな」

「うん、また」


半年後、想の初出版「可住衛星ルナ」が本屋に並んだ。それから数ヶ月後。

「おい」

「やあ」

「どうだ、本の売れ行きは」

「2400部」

「そっか、ルナが協力してくれたら世界中で100万部売れるかもしれないのにな」

「ああ、でもルナは僕がルナに甘えて成功したとしても、その後ダメになるってわかってるんだと思う。ルナは僕にSF作家として自力でやっていくことを望んでるんだよ」

「そうだな、そう言う意味ではルナは俺やウサギより、お前のことをちゃんと考えてるって事だよな」

「そう思う」

「・・・・」

「ルナはソーダのCM降りた」

「そっか。このタイミングでね」

「ああ」

「へへ、じゃあまたな」

「うん、また」



9話 月見草


「おい」

「やあ」

「どうした、そわそわして」

「それがさあ、ルナが新曲出したんだよ。タイトルは『月見草』なんだ」

「ええ、マジか」

「ベランダの鉢植えに咲く月見草の曲なんだけど、発売日にいきなりヒットチャート1位なんだ」

「へ〜」

「世界中の集合住宅のベランダを鉢植えでいっぱいにしようっていう内容だ」

「そいつはいいアイデアだ。大量にCO2減らせるな」

「ああ、やってくれるよ」

「だな、じゃあまた」

「うん、また」



10話 2030年


「おい」

「やあ」

「ちょくちょく様子見に来てたけど、2030年になっても何も起ないな」

「そうだね、それどころか地球温暖化はストップして、だんだん涼しくなってるよ」

「1つ報告しないといけないことがあって」

「なに?」

「あの環境予測プログラムのことなんだ。俺の親父は天才物理学者なんだがマッドサイエンティストで人の心ってものが全くわからないんだ。だからあのプログラムは人間の心理っていう重要なファクターが欠けてたんだ。つまり人は追い詰められるとアクションを起こすってことだ」

「確かに2024年の気温上昇は今思うと異常だったよ。実際11月中旬くらいまで暑かったんだから。あんな事は以前にはなかったんだ。それでみんなが温暖化ストップに動いたんだよ。結局僕がその後出した本も鳴かず飛ばずだったんだけど、世界の気温上昇の数百万分の1℃でも、もしかしたら食い止めたんじゃないかと思って」

「そうかもな、そんな力が集まって地球温暖化がストップしたんだよな。ルナもずいぶん貢献したしな」

「・・・ルナが婚約したよ」

「へ〜、そいつは残念だったな」

「なんで?」

「お前ルナの事好きだったんだろ」

「へへ、内緒」

「どうするんだ、これから。来年卒業だろ」

「バイトしながらSF作家として自立を目指すよ」

「そっか」

「この夏ルナが日本でライブツアーやるんだ。タイトルは『ルナティック・ラブ』だよ。福岡にも来るから行ってみるよ」

「チケット取れるといいな」

「人気だから、なかなかね」

「ウサギに言って、チケット都合するようにルナに頼んでもらおうか」

「いいよ別に」

「・・・・」

「・・・・」

「そうか」

「照はこれからどうするの?」

「俺はタイムマシンでいろんな時代に行って見てSFを書くんだ。お前のより面白いぞ、きっと」

「あ〜、ずるいよ」

「ハハハ、そっちの時代で2075年まであと45年。お前が今22歳だから、67歳でタイムマシンに乗せてやるよ。会いにこい」

「うん」

「必ずだぞ。俺これからウサギとデートなんだ」

「あ〜、いいな〜」

「・・・・」

「・・・・」

「想・・・ルナに会えるといいな」

「うん」

「じゃあ、またいつか」

「うん、またいつかね」



11話(最終話) ハッピーエンド??


2075年 67歳の想

月見研究所ってここか。

「誰かいますか?」

「はい、どうぞ」

「あ、照」

「あ〜、ビックリした。想だよね」

「うん」

「やっと来たね。今ウサギがルナんとこへダイブしようとしてたんだよ」

「へ〜」

「ウサギ、ちょっと代われ。今から想がダイブするから」

「あ、想さんなんですね。初めまして、感激〜」

「初めまして、その節は」

照「いいから、いいから。想、イレブン・ダイバーかぶれ」

想「でもドッペルゲンガーじゃないとアクセスできないんでしょ」

「できるかできないか、やってみろよ」

「そうだね、試してみようか」

想がイレブン・ダイバーをかぶった。

「じゃ、スイッチ入れるから」

「うん」

「永久に戻ってくんな〜〜!ジジイ!スイッチ、ON!」

「おいっ!ウワ〜ッ!」

End


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