ディスラー 反省してるんだ

 彼らは三人か四人。

若い男の集団だった。

すれ違う、その瞬間。
舌打ちではない。
はっきりした言葉でもない。

ただ、聞こえよがしに
独り言の形で、
こう言った。

「……下」

ただ、
聞こえるように「下」と言った
それが、彼らのやり方だった。

僕は立ち止まらず、
振り返らずに、言った。

「そのレベルはいらないな」

同じように、
独り言の調子で、
でも届く距離で。

「どうせやるなら、
もうちょっと高度なのをやってくれよ。
こっちはネタ集めしてるんだから」

彼らは、少し間を置いた。
そのまま、距離を取るように離れていった。

――ここまでは、それだけだ。

しばらくして、
背中越しに、声が聞こえた。

「……あ、面白くないな」

さらに、もう一人。

「今の、ダメだわ」

ここで初めて分かる。

彼らは、
最初に「下」と聞こえよがしに言った

でも、
あとから自分たちで振り返っている

・今のは「下」だった
・でも、その「下」が面白くなかった
・自分たちでそれを認めている

誰かに向けた反省じゃない。
僕に向けた言葉でもない。
完全に、内輪の自己採点だった。

それを聞いて、
僕は思った。

ディスラーというのは、
言いっぱなしで終わるものだと
思っていた。

でも、
少なくとも彼らは違った。

最初は、
ただ聞こえよがしに「下」。

あとから、
「面白くなかったな」と自分たちで言う。

それだけのことだ。
美化もしない。
正当化もしない。

――なるほど。
こういうディスラーも、確かにいる。

そう思いながら、
僕はそのまま歩き続けた。
次のネタのことを考えながら。

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